昨年、夫は逆流性食道炎の手術を受けました。

本来は胃と食道のつなぎ目(噴門)を締める手術の予定でしたが、手術中に胃の壁が薄くなっていた部分が破れてしまい、やむを得ず胃を切除することになりました。

麻酔から目覚めた後、医師から「胃は約20%しか残せませんでした」と説明を受けました。

胃切除後に起こる「ダンピング症候群」

胃を切除した後は、「ダンピング症候群」と呼ばれる症状が起こることがあります。

食べ物が胃に十分とどまらず、一気に腸へ流れ込むことで起こるもので、大きく2種類あります。

早期ダンピングは食後すぐに起こり、冷や汗、動悸、めまい、吐き気などの症状が現れます。

後期ダンピングは食後1~3時間ほどしてから起こります。糖分が急激に吸収されることでインスリンが過剰に分泌され、低血糖になってしまうためです。手の震え、強い空腹感、頭痛、ふらつき、冷や汗などがみられます。

食事の回数を増やすなどの工夫で早期ダンピングはほとんど起こらなくなりましたが、後期ダンピングは今でも時々見られます。

「もっと食べたい」という脳と、「もう入らない」という胃

日本にいる間、ダンピング症候群や血糖値について何冊か本を読んで調べました。

その中で分かったことは、「食べる量」だけでなく、「食べる順番」もとても重要だということです。

おすすめされていた順番は、

  1. 食物繊維(サラダなど)
  2. たんぱく質や炭水化物
  3. フルーツやデザートなど甘いもの

つまり、最初に甘いものを食べないことが大切なのです。

日本から夫に何度も電話で伝えましたが、実際に食事を目の前にすると「今まで通り食べたい」という気持ちが勝ってしまい、ダンピングを繰り返していました。

パーティーではジュースを勧められたり、周りに合わせて食べ過ぎたり、デザートを断れなかったり…。

食べ終わった後になって体調を崩すことも少なくありませんでした。

「目で食べる」という工夫

朝食の1例

私がブラジルへ来てから、毎日の食事内容とダンピングの有無を記録し始めました。

すると、朝食後に症状が出ることが多いこと、そして料理がたくさん並んでいると、つい全部食べたくなってしまうことが分かりました。

食事は味だけでなく、見た目でも楽しみます。

そこで、「脳は満足するけれど、胃には負担をかけない食事」を考えました。

大きめのお皿を用意し、

  • サラダ
  • パン
  • じゃがいも
  • フルーツ

を時計回りに少しずつ盛り付けます。

砂糖を入れないコーヒーを添え、日によってはヨーグルトやゼリーを加えることもあります。

一つひとつの量は少なくても、お皿いっぱいに彩りよく並べることで、「たくさん食べる食事」のように見えるのです。

そしてパンは、「残してもいい」と決めました。

日本では「残すのはもったいない」と考えがちですが、無理に食べて体調を崩すよりもずっと良い。

コーヒーも二口しか飲めない日があります。それでも構いません。

視覚的な満足感を大切にすることで、「食べたい」という脳の気持ちと、「たくさんは食べられない」という胃とのギャップを少し埋められるのではないかと思いました。

その方法を始めた初日の朝、夫は嬉しそうに、

「今日はダンピングが全くなかった!」

と報告してくれました。

翌日の朝もダンピングは起こりませんでした。

もちろん、これだけが理由とは言い切れません。

しかし、食べる順番を守り、「目でも満足できる食事」にしたことが良い方向へ働いた可能性はあると感じています。

栄養を摂る食事と、「楽しむ食事」

今は、

  • 最初にサラダをしっかり食べる
  • あとは無理をせず、残してもよい
  • 外食の前には、家でレタス1枚でも何か口にしておく

この3つを意識しています。

食材を残すことに抵抗はありますが、「体を守るための必要な工夫」と考えるようにしました。

私にとって食事は、栄養を摂る時間であると同時に、「目で楽しむ時間」でもあります。

これからも夫の体調を見ながら、一番合う方法を一緒に探していきたいと思います。

※この記事は夫の体験をもとにした内容です。ダンピング症候群の症状や治療には個人差がありますので、詳しくは主治医や管理栄養士にご相談ください。